- 2016-12-6
- お客様の声・過去事例

葬儀というものは通夜や葬儀といった儀式だけではなく、病院にお身体をお迎えに上がるところから始まるのだと、痛感させていただいたことがあります。
病院にお迎えに上がり、ご遺族にご挨拶をし、故人様のお身体を確認させていただいたあと、私たちは必ずあることをお尋ねします。
「お身体はどちらにお連れすればよろしいですか?」
ご自宅にお連れすることができる方、できない方。事情はさまざまです。
喪主様のお住まいは高層マンションで、「自宅に連れて帰ることは無理だ」と仰いました。
わたくしは、提携先ご遺体安置所にお連れすることを提案いたしました。
しかし、このような施設では個別に霊安室が設けてあるわけではなく、一室に複数のご遺体を一時的に預かる形態のものが多く、このたびも例外ではありませんでした。
「衝立1つで仕切られて、隣に知らない人の遺体ががあるなんて、無理だよ。個別の部屋がある所を案内してください」
喪主様はこう仰いました。
次にご案内したのは、まだ新しく綺麗な施設ではあるものの、冷蔵庫(ご遺体の劣化を防ぐための棺が入るサイズの冷蔵庫)でお預かりとなるために、「故人を冷蔵庫に入れるのは嫌です」と、この提案も納得して貰えずでした。
安置所の不足は社会問題にもなっており、いつも私たちが頭を悩ませていることだ、など、さまざまなお話しさせて頂いた上で、私は勇気を振り絞ってこう申し上げました。
「もしも納得いただけないようでしたら、式場や安置場を持たれている大手の葬儀社さんにご依頼することをお薦めします」
お客様が驚いた目で私のことを見てきたのを覚えています。
目の前のお客様に他社さんをお薦めする葬儀社なんて、きっといないのでしょう。
ただ私としては、お客様のご希望に応えるならば、そうするしかなかったのです。
もちろんそのリスクとして、ご予定の予算で葬儀を執り行うには無理があるだろうことは付け加えさせて頂き、当社はその設備を持たないことにより、安く葬儀を承る事が出来る旨もお伝えしました。
そのようなやり取りの中で、「利益重視でないところが気に入った」と、最終的には当社でご希望通りの予算で、無事に葬儀を執り行っていただきました。
「心のこもった素敵な葬儀になりました」と、大変喜ばれ、私としては、嬉しいよりも安堵の方が強く、ほっと胸をなでおろしました。
さまざまな葬儀社がある中で、中小零細の葬儀社かもしれません。
だからこそ、少しでも利益を抑えた分をお客様に還元したいと思いますし、お客様には正直にあろうと心に決めております。
私たちにできること、できかねることを正直にお伝えした上で、それでも私たちに葬儀を依頼して下さるお客様には、誠心誠意、正直に、葬儀のお手伝いをさせていただく。
これこそが、私たちのささやかな、けれどとても大切なポリシーなのです。