
一言に位牌と言っても、用途によってさまざまな種類があります。基本的には中陰までの仮位牌と、中陰後の本位牌。
本位牌でも、札板に直接彫刻する板位牌と、複数枚の木札を納める繰り出し位牌。これらにに大別できます。
内位牌(仮位牌)
内位牌とは、白木でできた簡素な位牌の事です。臨終後にすぐに制作され、枕飾りや葬儀の祭壇で祀ります。故人の戒名、生前の氏名、死亡年月日、享年を、筆で直接書き記すか、あるいはそれらを書いた紙を札板に貼りつけます。
葬儀後は中陰壇で祀り、本位牌が出来上がると精(御霊)を移して、内位牌は寺院に引き取ってもらったり、お焚き上げします。
野位牌
内位牌と同様の白木の位牌で、寸法は内位牌より一回り小さいものが多いです。臨終後に制作し、枕飾りや葬儀の祭壇に祀られ、葬儀が終わると納骨までお墓に置いておきます。最近では用意しないケースも多い。
本位牌
四十九日の忌明け法要で内位牌から作りかえられる位牌(必ずしも四十九日だけとは限りません)を本位牌と呼びます。この位牌を仏壇の中で祖先として末永く祀っていきます。
本位牌は大きく「塗位牌」と「唐木位牌」に分けられます。
塗位牌とは木製の位牌(心材はマツやホウやヒバやタモなどの白っぽい天然木材)に漆塗りと金箔や金粉をあしらったもののことです。ほかにも沈金(漆面に刃物で文様を彫り、金箔や金粉を押し込む技法)や、蒔絵(漆で描いた絵が乾かないうちに金や銀などの金属粉を蒔く技法)や、螺鈿(貝殻の虹色光沢面を埋め込む技法)などといったものもあります。
最近では漆の産出量が激減しているために、カシュー漆やウレタン塗装などで加工するのが主流です。
唐木位牌とは主に紫檀や黒檀や白檀や欅の木で作った位牌に生漆(顔料を混ぜていない半透明の漆)で塗りを施した位牌の事です。紫檀や黒檀の木目がはっきりと見える、素材の良さを活かした位牌です。
こちらでも、漆ではなくカシュ-やウレタンなどを使用するのが主流です。ほかにも、仏壇にあわせて家具調にデザインされた位牌もあります。どの位牌を選ぶかはその方の好みです。宗派による位牌の指定というのは特にはありません。
繰り出し位牌
屋根と扉の付いた位牌で、その中に複数の薄い木の札が納めらるようになっています。それぞれの木札に死者の戒名や死亡年月日などを書き記し、祥月命日や月命日には該当する方の位牌を一番前面に持ってきます。
過去帳位牌
繰り出し位牌と同じ構造で、中に木札ではなく過去帳が収まるような構造になっています。ちなみに、過去帳を開いて安置する場合には見台という仏具が必要です。
位牌の選び方
位牌は、札板部分と台座部分に分かれます。台座も受花、上花、茄子座、返り花、框などの部分に分かれて構成されています(台座の構成は位牌によって異なります)。
位牌は必ずこれら札板から框までが分解できるようになっています。製造の段階で部分別に作った方が効率がよいから、追加彫刻する時に札板が抜けた方が作業しやすいから、などの理由です。
位牌の寸法
仏具業者は位牌の寸法を札板の高さで測ります。小さいものから3寸、以降5分上がり(3.5寸、4寸、4.5寸…)で大きくなり、大きいものでは6寸や7寸、寺院用のものでは1尺(10寸)を超えるものもざらにあります。
札板寸法で位牌の規格が決められているため、同じ寸法でも台座が違えば総高さは変わるという事態が生じるのは日常茶飯事です(たとえば、春日の4寸と猫丸の4寸では、台座の高さが異なるために総高さが変わります)。
また、位牌の札板横幅は通常2寸前後ですが、夫婦彫りや複数人をまとめて彫刻するための幅広サイズもあります。
さまざまな種類

位牌の種類もさまざまです。
台座の種類も春日、京中台、千倉座、勝美、葵角切、猫丸、二重呂門、出高欄、吹蓮華…。
塗りの仕様が並塗り、上塗り、タメ塗り、蝋色塗り。金の仕様が金箔、金粉、三方金、総金。装飾として沈金、蒔絵、螺鈿。
これら、さまざなま要素によって、同じ形の位牌でも金額は大きく異なります。また、中国製と日本製によっても金額は異なります。
どの形、どの寸法がいいかなど、しっかりと仏具店に相談しましょう。
仏具店を訪ねる時に準備しておくこと
すでにお仏壇が家にあって、新しく位牌を作るために仏具店を訪ねる時は、以下の点を事前に準備しておきましょう。
- ご先祖様の位牌の札板の高さと総高さ
位牌を作る時はご先祖様の位牌の高さを超えないようにします。 - ご先祖様の位牌の写真(台座)
特にこだわりがなければご先祖様と同じ形のものを選ばれるのがよいでしょう。 - ご先祖様の位牌の写真(文字彫刻)
ご先祖様の彫刻の方法を参考にします。たとえば「享年/行年」「歳/才」「没/寂/亡」などの文字を合わせます。 - 故人の戒名、生前の氏名、命日、享年が分かるもの
寺院にいただいた白木の位牌を持参したり、そこに書かれている内容のメモ書きや写真などでも構わないでしょう。
お仏壇がなく、これから購入される方は、お仏壇の大きさに合わせて位牌を決めましょう。
予算
位牌作成時の予算は、位牌本体の代金に、彫刻代金や文字の色入れ代金などが加算されます。
位牌本体は種類や寸法にもよりますが、安価なもので1万円前後、高価なものでは10万円を超えるものもあります。
安ければいいというものではありません。長くお祀りしていると塗りや金箔が褪せてきたり、芯材が痩せたり反ったりということもあるでしょう。同じ形のものでも中国製と日本製で金額が異なります。
故人の魂が宿る、永くお祀りされるものなので、総合的に考えてお位牌選びをいたしましょう。