
お仏壇は、ご本尊やご先祖様を祀る祭壇です。
本尊は掛け軸を吊るすものと仏像を安置する場合とあります。ご先祖様は位牌として祀ります。その他、浄土真宗は過去帳を見台に置きます。
これら以外にも、ご本尊やご先祖様をきれいに祀ったり、お勤めするために、さまざまな仏具が必要となります。
ここでは、宗派によって準備が必要な仏具についてご紹介します。
木魚(もくぎょ) 天台宗、真言宗、浄土宗、禅宗など

読経の時に叩いて音を出す木製の仏具です。木魚倍という先端を布で巻いた棒で「ぽくぽく」と叩きます。
魚の図柄をあしらっているのは、魚が昼夜問わず目を閉じない生き物で、修行者に寝ずに精進することを促しているためだと言われています。専用の布団において倍を用いて叩きます。
木柾(もくしょう) 日蓮宗、法華宗
読経や唱題の時に叩いて音を出す仏具です。日蓮宗や法華宗で用いられ、他の宗派の木魚と同じ役割を果たします。木魚より甲高い音が「きんきん」と鳴ります。専用の布団に置いて倍を用いて叩きます。
鉦吾(しょうご) 天台宗、真言宗、浄土宗など
金属でできた皿状の仏具です。読経や念仏や御詠歌を謳い上げるときに鳴らします。畳の上に置いて、撞木を用いて叩きます。甲高い乾いた音が「かんかん」と鳴ります。
民俗芸能や祭囃子でも使われる打楽器です。
内敷(四角) 天台宗、真言宗、浄土宗、禅宗、日蓮宗など

錦や金襴でできた敷物のことです。法事や盆彼岸などの特別な日には内敷を敷いてお仏壇をきれいに飾って差し上げましょう。
お仏壇の膳引(引き出して使用できる可動式の台)の上に敷いて、その上に霊供膳を置きます。三角形の内敷は浄土真宗で用いるものです。
三宝尊 日蓮宗、法華宗など
日蓮宗の正式なご本尊の祀り方は奥から、法華曼荼羅の掛け軸を背板に取りつけ、次に一塔両仏の三方尊の仏像を置き、次に日蓮上人の仏像を安置する。
「三宝」とは、仏教徒が尊ぶべき対象であり、仏・法・僧のことを指す。日蓮宗では、仏が釈迦如来、法が法華経、僧が日蓮上人と捉えている。
三宝尊の仏像は、中央の宝塔には「南無妙法蓮華経」と題目が書かれ、左右に釈迦如来と多宝如来の二仏が配置され、これらが一つになってできた仏像です。
八の巻 日蓮宗、法華宗など
朱塗りの経机に八つの巻物を置いた仏具。仏壇のスペースに余裕があれば、日蓮上人の仏像の前に置きます。須弥壇の中に安置するために幅が10センチ前後のサイズのものが多いです。
浄土真宗の仏壇に必要な仏具
浄土真宗ではほかの宗派では使用しない仏具が数多くあります。またそれらも、西(本願寺派)と東(大谷派)でも細かい仕様が異なります。
上卓(うわじょく)

仏壇上段、ご本尊の前に置く机です。四具足を並べます。四具足が並ぶほどのスペースがない場合は、華鋲や仏飯器を置きます。
ちなみに、浄土真宗ではさまざまな机のことを卓(「しょく」あるいは「じょく」)と呼びます。
四具足(しぐそく)
ローソク立て、火舎香炉、華鋲一対の4つの仏具のことを四具足と呼び、本願寺派では仏壇上段に置く上卓の上に荘厳します。大谷派に四具足はなく、華鋲と火舎香炉を荘厳します。
華鋲(けびょう)
小さな花立のような仏具です。水を入れて、樒を挿してお供えします。浄土真宗では茶湯器で水やお茶をお供えしません。阿弥陀様の周りには八功徳水というきれいな泉が湛えられてあるために、わざわざ水道の水を供えなくてよいとされています。
前卓(まえじょく)
仏壇中段に置く机で、五具足を並べます。
五具足(ごぐそく)

花立1対、ローソク立て1対、香炉の5つの仏具のことを五具足と呼びます。
本願寺派の具足を菖蒲型と呼び、銅に漆を塗った宣徳色、あるいは黒っぽい仏具を用います。
大谷派の具足は鶴亀形と呼ばれ、真鍮本来の地金(金色)の仏具を用います。また、鶴亀型の特徴として、ローソク立てが鶴と亀であしらわれていて、亀に乗った鶴の口先にローソクを立てます。
在家のお仏壇での荘厳は、普段は三具足でよいとされ、年忌法要や報恩講など、大切な法要の時は五具足にします。
土香炉(どごうろ)
青磁の香炉です。本願寺派は宗紋である本願寺藤の紋が入り、大谷派はおとしのついた透かし香炉を使用します。
木蝋(もくろう)
大谷派の鶴亀のローソク立てには、通常木蝋(木製の朱塗りのローソク)を挿して灯明とします。ローソクの形をした仏具ですのでこれに火をつけることはできません。また、本願寺派の四具足のローソク立てにも挿します。
内敷(うちしき)

浄土真宗の内敷は逆三角形でできています。人絹(化繊の絹)や機械刺繍のものから、高価なものは正絹や手刺繍のものまであります。法要や、盆、彼岸、お正月や故人の命日など、大切な仏事の時に荘厳してお仏壇を華やかにして差し上げます。
また、家の中に不幸が起きた時は白、または銀の内敷を敷きます。表裏でリバーシブルになっているものも販売されています。
内敷は、前卓や上卓と、その天板の間に挟んで飾ります。「打敷」と書くこともあります。
盛曹(もっそう)
大谷派で使用します。お供えのご飯を筒状にするための仏具です。大谷派での正式なごはんの供え方は筒状にして仏飯器に載せます。盛曹にごはんを詰めて、押し出して仏飯器に供えます。
灯篭(とうろう)
灯篭とは日本の伝統的な照明器具の一つで、神社仏閣や日本庭園の灯篭、室内を照らす行灯や手に持つ提灯など、様々な形があります。お仏壇における灯篭とはお仏壇内部の天井から吊るす吊灯篭が一般的で、真鍮やアルミなどの金属でできています。電線を這わせて火袋の内部で電球を灯し、阿弥陀如来を明るく照らします。
灯篭は他の宗派でも用いますが、浄土真宗のものは独特な形をしています。
丸型や夏目型と違って、六角の灯篭を用います。
さらに本願寺派の灯篭は猫足(灯篭の足の形が猫の足のように内側に曲がっている)で、大谷派の灯篭は丁足(灯篭の足の形が外に向かって張りだしている)です。
火袋の扉が仏壇の奥側、ご本尊に向くように取り付けます。阿弥陀如来を照らすための仏具だからです。
輪灯(りんとう)

輪灯とは、五具足のローソク立てと灯篭とともに、仏壇内部に灯りを照らすための仏具で、仏壇内部の一番外側に吊るして荘厳します。油煙よけの笠に合吊を取り付け、輪のついた油皿を吊るします。
もともとは油皿に油を注いて、灯芯に火をつけて灯明としました。油煙よけの笠がいるのはそのためです。現在では電球を取り付ける形がほとんどです。
大谷派は簡素な合吊ですが、本願寺派は菊輪灯と、細かな装飾が施されています。
瓔珞(ようらく)
瓔珞は浄土真宗以外の宗派でも用います。本願寺派では「隅瓔珞」と言って、宮殿の屋根の隅に取り付けて吊るします。大谷派では瓔珞そのものを吊るす荘厳の仕方はなく、笠の上に取り付ける「輪灯瓔珞」のための瓔珞があります。
法要や大切なお勤めの時に荘厳します。
供笥(くげ)
金箔を押したお供え物を乗せる仏具です。本願寺派では六角形、大谷派では八角形のものを用います。法要や大切なお勤めの時にお餅をお供えするための仏具です。寺院ではお餅だけでなく、砂糖菓子や果物などを高く積み上げていきます(大谷派では須弥盛といいます)。
おりん
「ちーん」と音を鳴らすおりんの仏具も浄土真宗専用のものがあります。
本願寺派は六角形のりん台を用います。大谷派では四角形のりん台を用い、りん用の丸布団ではなく、「りん輪」と呼ばれる金襴で編み込まれた輪っか状の仏具の上にりんを乗せます。
和讃

三帖和讃とは、親鸞聖人の著作である『浄土和讃』『高僧和讃』『正像末和讃』のことを指します。浄土真宗ではこれらの和讃を重要な経典としています。
和讃本は和讃箱と呼ばれる塗りの箱に丁寧に納めて、さらには和讃卓に乗せて安置します。和讃卓は仏壇の下段に置きます。
和讃箱
和讃を入れる塗りの箱です。宗紋(本願寺派は本願寺藤と五七の桐、大谷派は八ツ藤と抱牡丹)の蒔絵が描かれています。
和讃卓
和讃箱を置く台です。
御文章/御文(ごぶんしょう/おふみ)
白骨の章という、8代門主の蓮如上人が全国の門徒に向けての手紙の形式で著した、とても重要な法語です。本願寺派では「御文章」と呼び、大谷派では「御文」と呼びます。
御文章箱/御文箱

御文章、あるいは御文を入れる塗りの箱です。和讃箱同様に宗紋の蒔絵が描かれています。経机の左側、畳の上に置きます。蓮如上人が須弥壇左側に祀られているからです。