
キリスト教には大別してカトリック系とプロテスタント系があります。
いずれも、葬儀では重要な儀礼がいくつかありますが、保守的なカトリックでは伝統的な儀式に厳格で、中世に成立したプロテスタントは比較的自由で柔軟です。キリスト教の葬儀ではお葬式そのものよりも「死の迎え方」を重要視します。
息を引き取る際に司祭・神父(カトリック)、あるいは牧師(プロテスタント)が立ち会い、神に祈りながらその時を迎えることが大切とされています。キリスト教での死は「召天」または「帰天」と呼ばれ、神によって地上での罪が許され永遠の安息を与えられることとされ、やがて訪れる「復活の日」まで天国で過ごすことを意味します。イエス・キリストの復活思想によるものです。
キリスト教社会では、自分の住んでいる地域や洗礼を受けた宗派の教会に属しているのが一般的です。そのため、葬儀の際も本来は信者とその家族を対象としています。ですから、教徒・信者の方が危篤に至ったときにはその教会に連絡し、神父あるいは牧師に来てもらいます。また、葬儀も教会単位で、他の信者どうしが一緒に手伝い、お見送りします。
キリスト教徒ではないがキリスト教で葬儀をしたいと望まれる方は、プロテスタントの教会に訊ねてみるのがよいでしょう。伝統的で厳格なカトリックに比べると柔軟に対応してもらえるかと思われます。
カトリックの葬儀

カトリックはキリスト教最大の教派です。ローマ教皇を中心として、全世界に12億人の信者がいます。日本にはフランシスコ・ザビエルによって伝わり、現在では444,719人の信者がいます(カトリック教会現勢2013年)。
キリスト教の葬儀は、神への礼拝がメインです。仏式葬儀では焼香が参列者の弔意の表し方でしたが、キリスト教の葬儀では、讃美歌と献花で故人を見送ります。
- 病者の塗油
- 聖体拝領
- 納棺
- 通夜の祈り
- 葬儀ミサ・告別式
- 出棺・火葬
司祭が死に瀕している病者に油を塗ってすべての罪からの解放と永遠の安息を祈ります。
パンと葡萄酒を死者を迎える者の口に含みます。「聖体」とはキリストの血肉のこで、パンがキリストの肉、葡萄酒がキリストの血であるとされています。
司祭や家族で遺体を囲み、ともに祈り、聖水を撒いて納棺をします。聖水とは、司祭が祈祷して清めた水のことです。キリスト教では死者への衣服のしきたり(仏式における死装束)はありません。胸の上で手を組ませ、ロザリオや十字架を入れます。キリスト教の棺は黒の布棺か、黒の布を棺の上から掛けます。ともに白の十字架があしらってます。
カトリックではもともと通夜の習慣がありませんが、プロテスタントの前夜式や、日本社会における通夜の慣習に準じて行われることが多くなりました。聖歌斉唱→聖書朗読→司祭の説教→聖水撒布や献花、というのが一般的な流れです。
葬儀ミサでは故人の永遠の安息を祈り、告別式では参列者が故人との別れを偲びます。
カトリックでは本来告別式は行いませんが、日本の場合は一般的な葬儀に倣って告別式を行うことが多いようです。
葬儀ミサは、開祭(点火、聖水、献香)→言葉の典礼(聖書朗読、聖歌斉唱、司祭の説教)→感謝の典礼(パンと葡萄酒を捧げる)→赦祷式(キリストの来臨と死者の復活を祈る)という流れです。
告別式は、故人の略歴紹介→聖歌斉唱→弔辞弔電→献花→祈り→喪主挨拶、という流れです。
カトリックの教義では、その復活思想から火葬はしないのですが、日本の場合では遺体は荼毘に伏します。火葬場でも司祭にならって祈り、献花をして捧げます。
プロテスタントの葬儀

プロテスタントとは、16世紀の宗教改革においてローマ・カトリック教会への抗議よって分離してできた教派の総称で、「プロテスタント」という教派が存在するわけではありません。その宗派は数百以上とされるため、教義や儀式の進め方もそれぞれの教会によって異なります。必ず教会に相談しましょう。
また、カトリックが教会や儀式を中心に考えるのに対し、プロテスタントは聖書や個人の信仰を重視します。そのため儀式の自由度も高く、信者でなくても葬儀を受け付けてくれます。
カトリックの祭司や神父はプロテスタントでは牧師と呼びます。また、聖歌は讃美歌と呼びます。
【プロテスタントの葬儀の流れ】
- 聖餐式
- 納棺
- 前夜式
- 出棺式
- 葬儀・告別式
- 出棺・火葬
信者が危篤になった時、息を引き取る前に牧師による聖餐式を行います。カトリックによる「聖体拝領」と同じで、信者の口にパンと葡萄酒(キリストの肉と血の象徴)を与え、聖書を呼んで祈ります。
逝去後、納棺は速やかに行われます。納棺には牧師が立ち合い祈りを捧げます。キリスト教では死者の衣服のしきたりがありません。故人に衣服を着せて、遺族の手で納棺します。棺には黒の布を掛けます。
「前夜祭」や「通夜式」などと呼び方はさまざまです。
プロテスタントでは祭壇や祭式を認めていないため、祭壇には、十字架、ロウソク、生花、遺影などと質素な飾りつけをします。讃美歌斉唱、聖書朗読、祈祷、献花などが主な内容です。仏式のような通夜ぶるまいはありませんが、式後に軽食を囲んで故人を偲ぶことが多いようです。
葬儀は教会で行われるのが通例です。そのため前夜式までを自宅で行い、葬儀の日の朝に教会へ向けて「出棺」をします。出棺式にも牧師が立ち合い、祈りを捧げます。
カトリックでは、信者による厳粛な儀式としての「ミサ」と、故人との別れ場の場としての「告別式」を区切りますが、プロテスタントでは区切ることはないようです。また、「撒水」や「撒香」もなく、讃美歌や献花が儀式の主体です。讃美歌斉唱、聖書朗読、祈祷、故人の略歴紹介、弔辞弔電、献花、遺族の挨拶などが主な内容です。
出棺や火葬は他宗と同じような流れです。棺の中へのお花入れや、火葬炉前では牧師が祈りを捧げます。